AIロボティクスこれからお金のはなし

AIとロボットで、仕事はどの順番で消えていくのか

AIが文章を書き、コードを書き、絵まで描くようになりました。そこにロボティクスの実用化が重なってきています。 こうなると素朴に気になるのが、「自分の仕事も含めて、これからどういう順番で、どんな理屈で消えていくんだろう」です。 純粋に興味があるので、今わかっている範囲で頭の中の地図を作っておくことにしました。

先に断っておくと、これは予言ではありません。「何年に何がなくなる」と言い当てる話ではなく、消える順番には理屈があるという話です。その理屈さえつかんでおけば、ニュースに一喜一憂しなくても、 自分の足元がいつごろ揺れそうかは自分で読めるようになります。

まず、2本の軸で地図を描く

仕事が消える順番は、ざっくり2本の軸で説明がつくと思っています。

  • デジタルで完結するか、物理世界で体を動かすか。画面の中だけで終わる仕事ほど早く、 現実の物を相手にする仕事ほど遅く影響が来ます。
  • 定型か、非定型か。手順が決まっている仕事ほど早く、 毎回その場で判断が要る仕事ほど遅く来ます。

なぜこの順番になるかというと、技術の性質が違うからです。AIはまず「デジタル × 定型」を一気に飲み込みます。コピーするだけで無限に増えて、24時間働いて、追加コストがほぼゼロだからです。 一方ロボティクスは「物理 × 非定型」に最後まで手こずります。体が必要で、1台ずつお金がかかり、現実の段差やぐちゃぐちゃした現場は今もまだ苦手だからです。

だから消えていく順番は、地図の左上(デジタルで定型)から始まって、右下(物理で非定型)へ斜めに進んでいきます。 これを5段階のロードマップにしてみます。

消えていくロードマップ(5段階)

第0段階:デジタルで完結する定型の知的労働(もう始まっている)

ここはすでに進行中です。文章の下書き、翻訳、文字起こし、データ入力、定型のデザイン、簡単なコード、 一次受けのカスタマーサポート。画面の中で完結して、正解の形がだいたい決まっている仕事から順に、 AIが「下書き役」として入り込んできました。まだ人が最終チェックをしていますが、その人数は静かに減っていきます。

第1段階:とりまとめ役のホワイトカラー

次に来るのが、単発の作業ではなく「業務を最後までやり切るAIエージェント」が効いてくる層です。 資料を集めて、要約して、関係者に割り振って、進捗を追う。いわゆる中間管理的な調整や事務のとりまとめは、 手順が見えやすいぶん置き換わりやすい。「人にしかできない高度な仕事」より先に、「人と人の間をつなぐだけの仕事」が薄くなるというのが、たぶん多くの人の直感と逆で、こわいところです。

第2段階:構造化された物理環境(倉庫・工場・物流拠点)

ここでロボティクスが本格参戦します。ポイントは技術よりコストの逆転です。 ロボット1台の値段とメンテ代が、人を雇い続けるより安くなった瞬間に、現場は一気に入れ替わります。 最初に来るのは環境が整っている場所です。倉庫や工場のように、床が平らで、物の位置が決まっていて、 同じ動きを繰り返せばいい現場。ここは「物理だけど定型」なので、ロボットにとって一番おいしい。

第3段階:半分だけ整った現場(小売・飲食・清掃・配送)

次が、現実の雑多さが混じってくる現場です。お店、厨房、街なかの配送、ビルの清掃。 ある程度パターンはあるけれど、毎回ちょっとずつ違う。お客さんが急に動くし、床には予想外の物が落ちている。 ここは「物理 × 半分非定型」で、ロボットが一番てこずる帯です。 だから当面は全部置き換わるのではなく、人がロボットと組んで人数が減る形で進むはずです。

第4段階:対人・責任・予測不能(最後まで残る)

最後まで残るのが、人間が相手で、その場の判断と最終責任が要る領域です。 医療や介護の現場、教育、交渉、トラブル対応、揉めごとの仲裁。技術的に難しいだけでなく、「人にやってほしい」「誰かが責任を取らないと困る」という社会の側の理由で、自動化が最後に回されます。

じゃあ、何が生き残るのか

この地図を逆から読むと、生き残る職業の条件が見えてきます。職種名で覚えるより、条件で覚えたほうが応用が効くと思うので、5つに整理しました。

  • 現実の予測不能さを、その場でさばく仕事。決まった手順に落とせない現場対応や、 毎回条件が違う手作業。配管、修理、災害対応のような「マニュアルにできない現場」は粘ります。
  • 人が人にやってほしい仕事。同じことができても、相手が「人にやってもらいたい」と思う領域。 ケア、教育、接客の本質的な部分、信頼で成り立つ商売。
  • 最終責任を引き受ける仕事。意思決定し、結果に責任を負い、いざという時に頭を下げる役。 AIは責任を取れないので、ここは人に残り続けます。
  • AIとロボットを使いこなす側。道具が増えるほど、それを束ねて成果に変える人の価値は上がります。 消える側ではなく、消す側に回るポジション。
  • 自動化の採算が合わないニッチ。対象が少なすぎて、わざわざ専用のAIやロボットを作る投資が見合わない領域。 小さな市場は、案外あとまで人の手で残ります。

逆に言えば、デジタルで完結して・手順が決まっていて・誰がやっても同じで・責任を負わない仕事は、 早い段階で薄くなる。条件で見ると、自分の今の仕事がどのあたりに立っているかが、わりと冷静に測れます。

自分はどう備えるか

この地図を描いてみて、自分なりの結論はシンプルでした。消される側ではなく、作る側・使う側に回る。その答えとして自分が一番こだわったのが、転職先に自社開発企業を選んだことです。 じつは100社近く受けて落ちまくった転職活動の話を前に書きましたが、あれだけ受けたなかで最後に「ここだ」と決めた軸が、まさにこの地図でした。

理由はこの5条件にそのまま当てはまります。受託やSESのように人手の時間を切り売りする働き方は、マンパワーそのものなので、 置き換えの圧力を一番まともに受けます。これは前に書いた時間を売らない副業を選んだという話と地続きでした。 いっぽう自社開発は、自分たちのプロダクトを「何を作るか」から決めて、世に出した結果に責任を持つ側です。 上の条件でいう「使いこなす側」「最終責任を負う側」に、働き方ごと自分を置けます。 AIやロボットが道具として強くなるほど、こっち側にいる人の価値はむしろ上がる。だから自分は、職そのものを地図の進む先に寄せました。

個人開発のaoicreamも同じ理屈で続けていますが、あくまで自分の土台は「自社開発企業で物を作る側にいること」です。 副業はその延長で、本業で身につく「作る力」を、自分の名前でも積み上げておく保険のようなものだと思っています。

仕事が消える話はどうしても不安をあおりがちですが、順番に理屈があるとわかると、わりと落ち着いて構えられます。 全部が一斉になくなるわけではなく、地図の左上から斜めに進むだけ。 だったら、進む先の側に、まず自分の職を置いておけばいい。考察してみて、やることはむしろ明確になりました。

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