仕事を辞めたあとに来る、お金の話
会社を辞めて無職になったとき、一番こたえたのは「落選通知」ではありませんでした。収入がゼロなのに、容赦なく届く請求書です。
結論から言うと、収入が止まっても、住民税・国民健康保険・国民年金は前年の収入をもとに請求が来ます。平均的な会社員(前年の年収450万円ほど)なら、無職の半年でざっと35〜40万円。 生活費とは別にこれだけ必要になります。
この記事では、退職して半年を無職で過ごした実体験から、(1) いくら必要かを年収から概算できるシミュレーター、(2) 住民税・国保・年金それぞれの仕組みと金額の目安、(3) 14日・20日以内などの手続き期限、(4) 払えないときの免除・減免(年金は電子申請で全額免除が通った話)までをまとめます。辞める前に、この4つだけでも頭に入れておいてください。
まず、自分の場合いくら必要か出してみる
年収帯によって金額はかなり変わります。前年の年収と、収入がない期間を入れると、 住民税・国保・年金の半年(など)の目安がその場で出ます。動かして桁感をつかんでみてください。
辞めたら、半年でいくら必要?
前年の年収と無職になる期間を入れると、住民税・国保・年金の目安が出ます。
- 住民税前年の所得ベース約11万円
- 国民健康保険自治体差が大きい約16万円
- 国民年金月17,920円の定額約11万円
※ あくまでざっくりした目安です。国民健康保険は自治体によってかなり差があり、 扶養している家族や各種控除でも金額は変わります。介護保険分(40〜64歳)は含めていません。 正確な額は、辞める前に市区町村の窓口で試算してもらうのが確実です。
数字を見て「思ったより多い」と感じたなら、それがこの記事で一番伝えたいことです。 以下で、なぜこの3つが無職期間に重くのしかかるのか、内訳をひとつずつ見ていきます。
① 住民税:収入がなくても、去年の分が来る
一番ぎょっとしたのが住民税でした。住民税は、その年に稼いだ分にかかるのではなく、前の年の収入をもとに計算されて、翌年に請求が来ます。
つまり、会社員として普通に働いていた去年の収入に対する税金が、無職になった今年、まとめて自分のところに請求されます。 会社員のときは給料から天引きされていたので意識すらしていませんでしたが、辞めると普通徴収に切り替わり、 一括または年4回(6月・8月・10月・翌1月)の納付書が郵送で届きます。収入は今ゼロなのに、過去の自分の稼ぎに課税される。この時間差が、本当にきつい。
住民税の額は、おおまかには「前年の課税所得 × 10%(所得割)+ 約5,000円(均等割)」。 所得が高かった人ほど比例して重くなります。退職するときは、給料天引きの残り分を最後の給与から一括で引いてもらうか、 普通徴収に切り替えて自分で払うかを選べるので、辞める前に会社へ確認しておくと慌てません。
② 健康保険:辞めた瞬間に高くなりがち
会社を辞めると、それまで入っていた会社の健康保険から外れます。選択肢はだいたい3つです。
- 国民健康保険に切り替える
- 前の会社の健康保険を「任意継続」する(最長2年)
- 家族の扶養に入る
会社員のときは保険料を会社が半分払ってくれていました。辞めるとその折半がなくなるので、同じ保障でも自己負担はぐっと増えます。国民健康保険の保険料も、住民税と同じく前年の収入をもとに決まるので、辞めた直後ほど高くなりがちです。
私は金額を比べて任意継続を選びましたが、ここは人によって有利不利が変わります。 国保は自治体によって保険料がかなり違ううえ、扶養家族の人数でも変わります。 辞める前に、国保の保険料を市区町村の窓口で試算してもらい、任意継続の金額(加入していた健保組合に聞けば分かります)と両方を見比べて安いほうを選ぶのが正解です。
③ 年金:免除は「マイナポータルから電子申請」で通った
会社員のあいだは厚生年金に入っていて、これも保険料は会社と折半、給料から天引きでした。 辞めると国民年金に切り替わり、保険料は全額自分で納めます。金額は収入に関係なく定額で、令和8年度は月17,920円。半年で約11万円です。
ただ、国民年金には収入が下がった人向けの「保険料免除・納付猶予」制度があります。 私はこれを使いました。ポイントは、窓口に行かなくてもマイナンバーカードがあればオンラインで申請できることです。
やったことは単純で、マイナポータルから「国民年金の保険料免除・納付猶予の申請」を電子申請しただけ。 マイナンバーカードでログインして、必要事項を入力して送信。役所に出向く必要も、紙の書類もありませんでした。 前年より収入が大きく下がっていたこともあり、結果は全額免除。 無職期間にこの定額負担が消えたのは、地味にかなり助かりました。
免除されると目先の支払いはゼロになりますが、その期間は将来もらえる年金額に一部だけ反映される扱いになります (あとから「追納」して満額に戻すことも可能)。それでも、払えないまま未納で放置するより、まず免除を申請するほうが圧倒的に得です。 未納は将来の年金にも障害年金などの保障にも響くので、苦しいときほど「免除申請」を先に動かしてください。
年収帯ごとに、半年でいくら必要か(早見表)
シミュレーターと同じ前提で、前年の年収帯ごとに住民税・国民健康保険・国民年金を半年分ざっくり見積もると、おおよそこのくらいです(独身・扶養なしの目安)。
| 前年の年収 | 住民税 | 国保 | 年金 | 半年の合計 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 約6万 | 約10万 | 約11万 | 約27万円 |
| 400万円 | 約9万 | 約14万 | 約11万 | 約34万円 |
| 500万円 | 約12万 | 約18万 | 約11万 | 約41万円 |
| 600万円 | 約15万 | 約22万 | 約11万 | 約48万円 |
国民年金は収入に関係なく定額なので、どの年収帯でも半年で約11万円。 一方、住民税と国保は前年の収入に比例して増えていくので、稼いでいた人ほど辞めたあとの負担も重くなります。 国保の額は自治体差・扶養・各種控除でかなり変わるので、正確な数字は市区町村の窓口で試算してもらうのが確実です。
手続きには「期限」がある(ここが落とし穴)
やっかいなのは、健康保険と年金の切り替えに退職直後の短い期限があることです。 知らずに過ぎると、保険証が使えない空白期間ができたり、手続きが面倒になったりします。退職したら、まずこの3つを期限内に。
| 手続き | 期限 | 窓口 |
|---|---|---|
| 健康保険の任意継続 | 20日以内 | 加入していた健保組合 |
| 国民健康保険への加入 | 14日以内 | 市区町村 |
| 国民年金への切り替え | 14日以内 | 市区町村 |
とくに任意継続は20日を1日でも過ぎると原則できないので最優先です。 国保と任意継続は金額を比べてから選びますが、この期限の短さがあるので、辞める前に両方の保険料を試算しておくと当日慌てません。
払えないなら、放置せず「相談」する
ここで一番伝えたいのは、払うのが厳しいときほど、黙って放置してはいけないということです。
国民年金は、さきほど書いたとおりマイナポータルからの電子申請で免除・猶予を申請できます。 国民健康保険や住民税も、自治体の窓口に相談すれば減免や分割納付に応じてもらえることがあります。 いずれも自分から申請しないと始まりません。放っておくと延滞になったり、最悪は差し押さえにつながります。
「無職なのに窓口に行くのは気が引ける」と思うかもしれません。でも、こういう制度はまさにそういう状況の人のためにあります。 私も、来た請求書をすぐに払えるか冷静に見て、無理なものは早めに相談・申請する、と決めてからは気持ちが楽になりました。
出ていくだけじゃない:失業給付も忘れずに
ここまで出ていくお金の話ばかりでしたが、入ってくるお金もあります。 雇用保険に入っていた人は、退職後にハローワークで手続きをすると失業給付(基本手当)を受けられる場合があります。
ただし、自己都合の退職だと受給開始まで一定の待機・給付制限の期間があり、すぐには振り込まれません。金額や開始時期は退職理由や勤続年数で変わるので、 退職後はできるだけ早くハローワークで手続きと確認をしておくのが安心です。出費の計画を立てるときは、 この給付が「いつから・いくら」入るのかも合わせて見ておくと、必要な貯金の額がはっきりします。
やることチェックリスト
最後に、自分の経験から「これだけは」というものを時系列でまとめておきます。
辞める前に
- シミュレーターで「半年でいくら必要か」を出し、生活費+その額で半年〜1年分の貯金を確保する
- 国保と任意継続の保険料を試算して、どちらが安いか調べておく
- 住民税の残り(普通徴収への切り替え分)がいくらあるかを会社に確認しておく
辞めたあとに(期限のあるものから)
- 健康保険の手続き(任意継続は20日以内/国保は14日以内)
- 国民年金への切り替え(14日以内)と、苦しければマイナポータルから免除申請
- ハローワークで失業給付の手続き
- 払うのが厳しい税・保険料は、放置せず窓口で減免・分割を相談
知っておくだけで、慌てなくて済む
住民税も健康保険も年金も、制度として知ってさえいれば、ちゃんと準備も相談もできます。 こわいのは、何も知らずに無職になって、ある日いきなり高額な納付書が届くことです。
収入が止まっても、過去の自分への請求は止まらない。それを知っているだけで、心の余裕がまったく違います。生活費とは別に、できれば半年〜1年分を手元に置いてから辞めるのが理想です。 私が転職活動を焦らずに進められたのも、この出費の存在を途中から意識して、お金をかけない方向に切り替えていたからだと思います。 辞めたあとの転職活動そのものの話は100社受けて落ちまくったに書いています。